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福島地方裁判所 昭和31年(行)3号 判決 1956年10月15日

原告 影山晴幸

被告 河内地区農業委員会

主文

本件訴はこれを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、「被告が昭和三〇年一一月一八日別紙目録記載の土地につきなした開発不適地の認定処分はこれを取消す。」「訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、

(一)  原告は昭和二三年から福島県安積郡逢瀬村大字河内字栗生及び字大岩山地内において土地開発に従事している者であるが、別紙目録記載の土地に入植する考で、昭和三〇年七月七日及び同年八月二日の二回にわたり、被告農業委員会に対し、農地法に基き別紙目録記載の土地につき、土地開発適地認定願を提出したところ、被告農業委員会は同年一一月一八日同土地が開発に不適地であると認定し、県知事に対する申達を拒んだ。

そこで原告は、同年一二月一日附書面を以て福島県知事に対し訴願したところ、処分行政庁を経由せず直接提出したため却下せられたものであることを昭和三一年四月二五日はじめて知つた。

(二)  しかし別紙目録記載の土地は、昭和二七年及び昭和二八年の二回にわたり、福島県が農地とすることに適していると認定したこともあり、開発に適する土地である。しかるに被告農業委員会は前記のとおり開発不適地と認定したため、原告は入植の目的を達し得なくなつた。このことは被告農業委員会の違法な行政処分により原告の権利を侵害するものである。

よつて被告農業委員会がなした前記開発不適地の認定処分を取消すとの判決を求めるため本訴に及んだと陳述した。

被告訴訟代理人は、本案前の答弁として、「本件訴を却下する。」との判決を求め、その理由として、被告農業委員会は別紙目録記載の土地に原告の土地開発適地認定願に対して適否の決定をなした事実はない。従つて本件訴は不適法であり却下せらるべきものである。

本案の答弁として、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、その理由として、原告が被告農業委員会に対し土地開発適地認定願を提出したこと及び被告農業委員会が不適地の認定をなした事実は否認する。その余の事実は全部知らない。被告農業委員会は原告が提出した福島県知事宛の書面を県知事に取次いだことがあるに過ぎないと述べた。

理由

農地法上農業委員会は開発して農地とすることが適当な土地につき国が買収すべき旨申出ることはできるが、自ら行政処分として土地開発適否の認定をなすべきことを定めた規定はないから、かかる認定をなす権限はないものといわなければならない。従つてたとえ農業委員会が土地開発適否の認定をなしたところで、かかる認定は行政行為ということができないのであつて、その認定によつて何人の権利義務に影響するところなく、単なる意思決定ないしはその表示とみるの外はない。

されば、原告の本訴請求は行政行為でない被告農業委員会の別紙目録記載の土地につきなした開発不適地の認定の取消を求めるものであるから、不適法として却下すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 羽染徳次 小堀勇 長田弘)

(別紙省略)

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